昔は良かった?

先日パオロ・マッツァリーノ著「昔は良かった病」という本を読んだ。中々強めのキャラクターの文体だったけれど面白かったです。ざっくり言うと、昔は良かったって実は幻想だよ、っていう本。(ざっくり!)

昔は良かったよね。
ということをとかく年を取ると言いがちだけれど、実際にはどのくらい昔の方が良かったことがあるのだろうか。
夏がここまで暑くなかったこと、あとは、消費税が3%だったこと。あぁ、3%、良かったよねえ。
しかし、私の中では、逆に昔より良くなったと思うことの方が多いような気がしている。

分煙が当たり前になり、路上喫煙する人もほとんどいなくなった。
昔は、歩きたばこが当たり前だったことが、今では考えられない。
でも、路上喫煙が地域によって禁止になりはじめ、喫煙所が限られてきた頃、「前は良かったのに」と文句を言う人は沢山いた。
もちろん文句を言うのは喫煙者だ。
煙が本当に苦手だった私には、とても良い世界になったと思った。

思うに、昔は良かったという人は、我慢を強いてきた側で、良い時代になったという人は、我慢をしてきた人なんだろうと思う。
またジェンダーの話をしてしまって申し訳ないが、足を踏みつけてきた、とまでは言わなくても、「男女の格差について考える必要のなかった特権」を持ってきた男性にとっては、やいのやいの言われる現在はとてもうるさく感じ、「昔は良かった」などと思うのだろう。

私は、我慢をしたり苦しい思いをしてきた人達の事を思うと、昔の方が良かったとはやはり全く思わない。
SNSの普及は問題点は沢山あるけれど、声の小さい人達がSNSのおかげで声を上げられるようになった、その功績は大きいんじゃないかなと思う。そして、世の中が動き、「昔の方が良かったなあ」と思う時、自分は誰かをないがしろにして生きてこなかったかと振り返る余裕は持ちたいと思う。

2021/02/27