排除したい人は噂を使う

小学生や中学生の頃、「AちゃんがBちゃんの悪口言ってたよ」とわざわざ伝えてくる友達がいた。と、ただ被害者ぶるつもりもなく自分もやってしまっていた思い出もある。
その当時は、深く考えることも無かったが、この「悪口を伝える人間」が一番姑息なのでは、ということに大人になると気付く。
自分も気に入らないAちゃんを悪者にしながら、Bちゃんに仲間だよとアピールして、でも、自分もBちゃんの気に入らない部分に納得しているからこそ、その「悪口」をAちゃんが言っている体にしてBちゃんに伝えることができるのだ。
だから、もし私の悪口を伝えてくるような人がいたら、「あなたのことも信用しませんけどね」と心の中で思うだろう。

東日本大震災の時、外国人による略奪が相次いでいるという話が流れてきた。しかし、そのような事実は無く、それはデマであった。
最近では、北海道の土地を中国人が買い漁っているという話をごく一般人の知人から聞いた。
ふと思う。どこから聞いてきた話なのだろうか。
北海道の土地に関して、右翼で有名な言論人が「こんな綺麗な景色も中国人のものです」とツイートをし、その後現地に住む人から「その場所は国有地だ」と突っ込みが入っていた。
デマを流すのは、中国や韓国が嫌いな人間が流しているんだ。と目の当たりにした気分だった。

関東大震災の朝鮮人大虐殺は、歴史上の事件で自分とは違う世界、きっと頭の狂った日本人が行ったことなのだろうと思いたいが、デマを信じて話す人たちが善良な市民であることを思うと、地続きの出来事なのだと思う。

最近、東京都武蔵野市で、外国に国籍がある市民にも住民投票ができるようになる条例が話し合われることになった。(委員会で可決したようです。良かった。)→追記あり
友人が「引っ越してくる外国人が大勢いると噂されていてそれが心配」と話していたが、その「大量に引っ越してくる」という噂も、デマだという記事が出た。
もう、何が真実なのか、自分で確実に言えることは何も無いと思う。
けれど、こういう「外国人が増えると治安が悪くなる」といったようなエビデンスもなにも無い噂を信じてしまう裏側には、「日本人と外国人は違う人間」「日本人は外国人より優れている」と思い込んでいるアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)があると思う。
普通の、本当に普通の、差別なんてしたくない私たちは、こうした無意識の偏見をいつでも意識するように気を付けていかなければいけないと思う。
一番最初に噂を流す人たちは、愛国者だという顔をして、日本人は仲間だよと言いながら、自分が日本人と認めない人たちの悪い噂を流し、その人たちの偏見は無意識でも何でもなく確実に排除しようと差別している。

デマをデマだと証明することは難しい。
ヘイトスピーチだらけの日本で暮らす在日外国人の方々は日々恐怖を感じていることだろう。
色んな理由で日本に住む人々が、その属性によって差別されること無く、安心して暮らしていける世の中になってほしい。
そのためにも、私は、何が本当なのかわからないものを無自覚に広めることだけはやめなければと思う。

ところで、小池百合子都知事は、9月1日の関東大震災朝鮮人犠牲者の追悼式典で5年連続で、追悼文を出さなかった。歴史を変えようとしているレイシズムを私は許したくないと思う。

2021/12/14

追記

武蔵野市の条例、委員会では可決していたが、本会議で本日否決とのこと。武蔵野市ではヘイトスピーチの温床となってしまっていた。私は、外国籍の人も社会の一員として認識し、選挙権だってあるべきだと思っている。しかし選挙権を認めるのは難しいだろうから、せめて住民投票くらい認めろよと思う。コンビニでアルバイトをする外国人を偉いなぁと言う同じ口で、外国人は意見をするなと言うのだろうか。労働力だけ搾取しようとするこんな国に来たがる外国人はどんどん減っていくだろうな。と思う。否決となり非常に残念です。

2021/12/21