読書体験その1

経験したことの範囲内でしか、想像することは難しい。
大人になれば、自分の経験外のことも多少想像して話すことも出来るようになるけれど、それでも限界がある。
そんな中、読書は自分で出来ない経験を仮体験させてくれる。
緊急事態宣言の中、読書熱が高まり、私にしては色んな本を読んだ。
そんな、自分が体験をした感覚になった本の話をちょっとずつ。
今回は、「コンビニからエロ本がなくなる日」と、「ファーストラブ」。

以下ネタバレを含みます。

フェミニズムがコンセプトのムック、エトセトラ。それのvol.1「コンビニからエロ本がなくなる日」を少しずつ読んでいる途中に、島本理生先生の「ファーストラブ」を読んだ。

この本を読んで、どうしても思い出してしまうことがある。子供の頃、実は私は性被害に近い経験にあった。まだ小学生低学年の頃の事だった。ただ、私の中で、その経験が自分の性格形成に影響があったとは思っていないし、トラウマになっているとも思っていない。
だからか、コンビニにエロ本があり、小さな子供達が簡単にそれを目にしてしまうことが、性的虐待、性暴力になる、ということがぼんやりとしか分かっていなかった。「コンビニからエロ本がなくなる日」を読みながら、そりゃ子供の目に触れるとこに置かないでほしいよね。その程度の認識だった。

そんな感覚のまま読んだ「ファーストラブ」は、フィクションではあるけれど、父を殺害した容疑者の環奈が送ってきた、「幼い頃の性的虐待」を、私は、追体験した。
まだまだ性欲を知らない子供に浴びせられる「男」の目。なんておぞましいのだろう。そして、味方になってくれるはずの母親は、見て見ぬふりをしている。
そこで初めて、なんて私は浅はかで思慮が浅い人間だったのだろうと気付いた。
凄く恥ずかしい。
私は、母が頼もしかったから、母がきちんと心配してくれたから、トラウマを抱えることなく、今生きていられるんだ。ということを実感した。

「コンビニからエロ本がなくなる日」を再び読み、いろんな人のエッセイが府に落ちる。
とても良い本だった。
男性の性欲だけ、あまりにも許され過ぎてきた時代から、変わろうとしている。
男性は、さみしい時代になったと言うかもしれない。
でも、男性の性欲そのものを憎んでコンビニからエロ本を無くしてほしいと訴えたわけではない。
ただ、その露出は、暴力にも成りうるんだという事。それを想像してほしい。

結局、想像力を働かせるということは、大人の大事な要素のようなもので、それを養うために、読書はとても良いツールだと思う。

2020/05/31