販売員という仕事

洋服を作っている人間のくせに、洋服そのものの魅力だけではなく、販売員さんによって、購入を左右されることがよくある。
店員さんと会話するのが、けっこう好きだ。

接客はコミュニケーションの一つだと思う。
自分に自信が持てないと、他人とコミュニケーションを取るのにも臆してしまったりする。
若い子が接客が苦手な理由は、コミュニケーション能力自体がまだ未熟だからなのかなと思う。そして客が大抵年上だったりするので、ますます接客は難しいものになる。
大人になればなるほどコミュニケーションはうまくいくようになるのだけれど。
とはいえ、メディアでの“接客ディス”には辟易してしまう。
話しかけてこられるのが嫌だ、と、右にならえのように唱えられると、それもういいよ、と言いたくなる。


お店に入ってきたお客さんは、何かを探しているはずで、その力になるのが販売員の仕事だ。
でも、若い販売員は、接客のノウハウを大して学ばずに売り場に立たされている人がほとんどだと思う。
先輩の背中を見て学べ、という感じで、何も教えられず、そのうえ、「売れ」と言われる。

販売員に「売り付けてやる」なんて意識の人はほとんどいなくて、みんな、どうにかお客様の役に立ちたいと思っているはずだ。でも、どうしたらお客様の役に立つのかが教えられてこない。
メディアで不器用な販売員に文句を言う前に、自力で勉強していくしかない、若い販売員の必死さを、もう少し暖かい目で見てはくれないだろうか、と思う。
何が悪いって、教育をする余裕と体力のないアパレル業界が悪いのだから。

販売員の仕事は、給料も安い。「自分にもできる」なんて言っているデザイナーに会ったこともある。
デザイナーや企画の人間は、売ってほしいと言う前に、その商品の魅力をきちんと販売員に伝えられているのだろうか。

今、私は自分で作って、自分で直接販売をしている。
商品の事を一番わかっているのは製作者なのだから、本来は製作者本人が接客するのが一番良いとは思う。
でも、大きな企業にはそんな事できるはずもないのだから、製作側の思いをどのくらい販売員に伝えられるかが大事になってきて、それがたぶん出来ているお店の販売員さんに接客されると、とても気持ちがいいなと思う。そして、魅力的な商品にさらに説得力が生まれて、良い買い物体験になるんだと思う。

私も、自分が嬉しい気持ちになるような接客を心がけたい。

2020/07/07